汐里(しおり)は、あるホテルの部屋に居た。
バスタブにシャボンの素を入れ湯を張り･･･
その光景を ぼんやりと眺めていた。



約束の時間、
１時間近く過ぎても 客人は現れない。。。

ママに連絡を取ると
「今日はバラしね。。。フリーでいいわよ。
　　　　　　 明日は店に出なくてイイから、たまには遊んでらっしゃい。。。」

そう言われ、冷めかけのバスタブに１人浸かり
手足を伸ばし、消えかけのシャボンに身を沈めた。




ホテルを出て、足の向くまま賑やかな繁華街に出た。
雑踏の街の中、嫌いじゃない。。。
酔っぱらいも、寄り添うカップルも 人目気にせず闊歩してる。
盛り場特有の街の匂いと光景。
それぞれがそれぞれの 夜の時間。。。

汐里は、メンキャバに入った。ホストクラブよりは派手さがなく
最近は その違いでさえ曖昧な感じ･･･
煌びやかな店でなく、それほど騒がしくも無い店内。

紅色の灯りの中、１人BOX席に案内された。
甘い声のホスト･･･
「御指名はありますか？」っと男本を差し出された。

汐里は、好みに拘りもなく･･･
「1人だけでイイわ。。。」
「１番指名のかからない子をお願い･･･」っと注文をした。

酒と一緒に、隼人がやって来た。

「始めまして、いらっしゃいませ。隼人です。」
チャラいワケでも無く、ワリとスッキリした男だった。
隼人は まだ入店３ヶ月、固定客もいない･･･
ドコかまだ不慣れで スレて無いぎこちなさ･･･。

「まだ、半人前なんですけど。イイ奴ですから贔屓にしてやって下さい。」
黒服の男が言った。


「へぇ。。。そうなんだぁ。」

「隼人君、ちゃんと食べれてる？」
「えっ･･･まだまだで、思うようには･･･」
「でしょうね。。。売れなきゃ稼ぎも無いものね。」

黒服の男を呼び
メニューの中から、酒やらフルーツやら値の張るモノを片っ端からオーダーした。
テーブルの上は、飲みきれない食べきれないモノがフンダンに並べられた。

「隼人君、全部食べていいわよ。アタシの事は気にしないで･･･」
「ただ、お願いがあるの･･･膝枕して。。。」

そう、言いながら隼人の膝枕で、構わず横になった。

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