クチごもる瑞穂。

「んっ？　どうした？　悪い事言ったか？」
「･･････。」
「耕ちゃんに、言わなきゃいけない事がある。。。」
「んっ？　何？･･･」
「瑞穂･･･こっち向いて、ちゃんと話して･･･」

「アタシ･･･ｱﾀｼ･･･本当は耕ちゃんの彼女なんかじゃ無い･･･」
「えっ、どうゆう事？」

「耕ちゃん、あのバイク事故の事、覚えてないでしょ？」
「まだ、思い出せないでしょ？」

「…ぅ･･･うん。。。」

「あの事故のせいで、アタシは耕ちゃんに近づいた。。。」
「あの事故で？･･･瑞穂、ちゃんと俺に教えてくれ･･･知ってる事全部。」

あの事故は、耕太1人の単独事故じゃない。。。
対向車の運転ミスに巻き込まれ、耕太のバイクは転倒、
耕太はバイクと一緒に引きずられ 転倒したバイクの下敷きになった。
女を乗せないって言ってた耕太だけど、あの日は特別だって女を後ろに乗せた。
バイクが転倒した時、投げ飛ばされた女は･･･
後続車に 跳ねられた。

「後ろに乗ってた女は、アタシの1つ下の妹。。。環希。」
環希は内蔵損傷が激しくて、手術したけど･･･
混沌とした意識薄れる時に、アタシに「耕ちゃんを耕ちゃんをお願い･･･」そう言って
息を引き取った。。。

耕　「･･･そんな･･･ｿﾝ･･･ﾅ･･･」

あの時は、たらればで･･･
耕ちゃんが　環希を乗せなかったら…
耕ちゃんが　環希を誘わなければ･･･
恨んだんだよね。。。アタシ･･･。

事あるごとに、アタシは環希に耕ちゃんの話を聞かされてた。
妹、環希が好きになった人、どんな奴ナンだろって
耕ちゃん記憶無くしてて、環希の事も全然覚えてなくて･･･
アタシの大事な妹の事、思い出すことも無くて･･･


「ごめん･･･ゴメン。。。ごめん、瑞樹」
「ごめんなさい･･･環希ｻﾝ。。。」
「辛い思いをさせてたんだな、俺のせいで･･･ゴメン…ｺﾞﾒﾝ。」

「でもね、耕ちゃん。復讐しようとか、そんなんじゃ無いのよ。」
「環希が、大好きだった男が どんな奴だったか、環希が選んだ男はどんなヤツだったか･･･」
「･･･知りたかっただけだから･･･」

「俺は、環希…ｻﾝに　　相応しい男だったか？」

「うん。環希が言ってた通りの人だった･･･。」
「･･･だからアタシも惹かれた、好きになった。…ダメなのに…」

「俺、今の瑞穂が好きだよ。ソレは変わらない･･･」
「ちゃんと、環希に謝りに行くよ。ちゃんと環希に伝えるよ。」
「俺だけ生き残っちゃったけど･･･」
「瑞樹と 一緒に生きて行きたいって･･･」
「勝手だって、解ってる。。。解ってるけど･･････」


「瑞穂、出来る事なら･･･」
「もし、俺を許して貰えるなら　俺の側に居て欲しい･･･」
「調子良すぎるかもしれないけど、環希を幸せにしてやれなかった俺だけど･･･」

「俺、ずーっと待ってる。。。瑞穂の事、俺の勝手で待ってるよ。」
「俺を受け入れて貰えるよう、その時まで待ってる。。。」

事実を知った、あの日から･･･
あれから･･･長い時間と季節が過ぎた。。。
俺の飛んだ記憶は、今でも少し霞んでる。
ソレでも、俺は過ぎる時間の中で、全てを受け入れようと覚悟もした。


２人は、環希の墓前に手を合わせていた。
瑞穂のお腹は、せり出すように大きくなっていた。

環希の分も･･･環希も一緒に・・・。



２人の幸福の後ろには、環希の後押しがあったのかもしれない。。。




ーENDー